メッセージ
プロジェクトに寄せる思い

「生命の源である海を、かけがえのない海として存続させるために」

中村征夫

私はこれまで世界78カ国の国々を訪れ、海という未知の世界に生息する様々な生きものたちの生態や、そこに暮らす人々と海との関わりをテーマに作品を撮り続けてきました。しかし、海外の海を旅するにつれ、日本の海の繊細さや多様性に次第に気付かされてきたのも事実です。

日本の沿岸は、黒潮、親潮、対馬暖流といった海流が列島をめぐり、その影響を受け、今日までわが国特有の豊かな海の幸が育まれてきました。そして、そこには海に感謝し、海を恐れ、海と真摯な姿勢で向き合う漁師たちの姿がありました。

世界で5番目に長いと言われるわが国の海岸線上には、複雑に入り組むリアス式の沿岸をたくみに利用した、日本古来の伝統漁法が息づいています。大掛かりな定置網漁から、少数や個人でひっそりと営む素朴な漁まで、数え上げたら枚挙にいとまがありません。それぞれの漁には長年の経験と、海でつちかわれた様々な知恵が、ぎっしりと凝縮されています。それはまさに、海に囲まれて生きる私たち日本人の誇りとも言えるものです。

生命の源である海を、かけがえのない海として存続させるために、私たちは今以上に身近な海へと、目を向けるべきではないかと思われます。

私たちの近くにある海、地元の海には、これら伝統漁法を守り続ける漁師たちが、今日も勝手知ったる漁場へと漕ぎ出していきます。素朴な漁法と、それを守り続ける漁師たちにスポットを当てることにより、改めてふるさとの海の豊かさに目覚め、地域が一体となって海との関わり方を再認識するという、絶好の機会になると思えるのです。


中村征夫(なかむら いくお)/水中写真家中村征夫(なかむら いくお)/水中写真家
1945年秋田県潟上市(かたがみし)出身。20歳のときに潜水と水中写真に取り組む。雑誌写真記者を経てフリーランスとなる。現在、海を専門とする撮影プロダクション株式会社スコール.、株式会社中村征夫オフィス代表。国内外の海を幅広く取材。ライフワークの東 京湾をはじめ、水俣湾、諫早湾など、環境にあえぐ海なども、ジャーナリスティックな視点で捉え続ける写真家でもある。講演会やテレビ、ラジオなど、様々なメディアを通し、海の魅力と環境問題を伝え続けている。写真集に「海中2万7000時間の旅」「ジープ島」「命めぐる海」など多数。